**カッパドキア**

カッパドキアの地はトルコの内陸部、中央アナトリアの高原地帯にある。
太古の時代にエルジイェス山とハッサン山の噴火で堆積された火山岩の大地が何万年もかかって風雨に侵食されて出来たという。
大自然の力によって生まれた不思議な景観の大地である。
2000万年前はこの地は海だったというから驚きだ。”カッパドキア”とはギリシャ語で「きれいな海の国」の意味だと聞いた。
カッパドキアはメルヘンの国のようでもあり・・・・ 別の星に降り立ったようでもあり・・・
初めて目にする光景ばかりが広がっていた。






キノコ岩
噴火によって硬度の違う岩が何層にも積み重なり下のほうの柔らかい凝灰岩は侵食され、硬い上部の玄武岩は帽子のように残ったそうだ。
煙突のようにも見えるこれらの岩を吹き抜ける風が人の声のように聞こえ、中に妖精が住んでいるという言い伝えもあり
現地の人々の間では「妖精の煙突」とも呼ばれているそうだ。

 

高さ10m以上もあるキノコ岩の内部は修道士の隠れ家に使われていたという。
岩の裾のわずかな土地にも杏やぶどうの木が栽培されていた。





奇岩の群れ
さまざまな形の岩は地層の色によって、白・ピンク・ベージュ・グレー・などカラフルに彩られている。

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らくだの岩
エリア内には犬・ふくろう・トカゲなどの形の岩も点在しているという



ギョレメの野外博物館
カッパドキアでは4世紀頃からキリスト教徒たちがギョレメを中心に生活していた。
その後イスラム教徒の圧迫をのがれこの地に次々と洞窟教会や修道院などをつくり始め400以上の教会があったという。
現在は約30の教会が集まるギョレメの谷が博物館として保存、公開されている。


ギョレメの景観


 
洞窟教会のある岩山

教会の入り口

教会の入り口は目立たないように作られている。
野外博物館には8つの教会が点在しバジル教会・りんごの教会・蛇の教会・・・・等
それぞれの教会にちなんだ名前がでついている。
中に入ると柱や丸いドームが岩山をくり抜いてつくられ
天井・壁面には鮮やかな朱色や青で聖像や幾何学模様が描かれて1000年もの時を語っている

かっては敬虔な祈りの場であった小さな空間に身を置くと
人の心の強さと、人のはかなさとが交錯して思いめぐってくるようだ。

バルバラ教会
(絵葉書より)

りんごの教会
(絵葉書より)




カイマクル地下都市

地下都市はキリスト教徒が異教徒の迫害から逃れるために作ったという。
カッパドキアには300以上の地下都市があるといわれている。
規模の大きいカイマクル地下都市は6000人から1万人以上収容できたそうだ。
内部は地下10階まであって台所・トイレ・ワイン醸造所・貯蔵庫・祭室・学校・も備えられ、羊やロバなどの家畜まで住んでいたようだ。
子供・婦女子は一番安全な地下10階が生活の場であったとか。
さらに10階からは非常用脱出の通路が2本作られ、一本は別の地下都市とつながり、他のものは迷路になっていたという。

地下都市の内部

小さな入り口からは想像もつかない地下の空間がまるでありの巣のように広がっている。

身をかがめて体を壁にすりながら狭い通路を通っていると
大自然の中では人も蟻も同じ存在なのだと思えてくる。
同時に過酷な自然に立ち向かって生き抜くための人間の強さと知恵に敬服の思いも強くする。

 



トルコじゅうたん工場

カッパドキアの特産品には、乾燥した大地で育ったぶどうでつくられたワイン
カッパドキア特産のオニキス、トルコ石で加工された宝石
世界的に有名なトルコじゅうたん
クズ川流域の赤い土で作られた陶器がある。
最古で最大といわれるワイナリーや工房を併設した宝石専門店、工程を見学できるトルコじゅうたん工場などが点在している。
工場といっても決して大きなものではなく、質素なたたずまいの工房からすばらしい特産品がつくられていた。

トルコ国営じゅうたん工場

有名なトルコのじゅうたんの工場では糸をつむぎ染色し織り上げる工程を見学できた。

染色の原料は自然の草木が使われシルクやウール素材が染められていた。
じゅうたんは織るというより「ノット方式」といって縦糸に結び糸をかける方法、しかも二重にかけていくのだそうだ。
染め手は年配の女性、織り子は10代の女性が主。
細かい升目に描かれた繊細な図柄を見ながら織っていく気の遠くなるような根気の要る作業だ。
完成まで数年かかるものも多いという。
出来上がった本物のじゅうたんはトルコの誇る芸術品だと納得がいくものばかりだった。

 



車窓の景色(カッパドキア~アンカラ)

カッパドキアからアンカラまでバスで陸路約3時間アナトリアの高原を走る。
時々山裾に民家が見えてくる以外は見渡す限り赤茶けて茫々とした景色が続く。
坦々と続く高原はおもに麦畑だそうだ。やがて春には緑の高原に変わっていくのだろうか。
麦のほかジャガイモ・たまねぎなども作られるそうだ。
トルコが自給自足の国だというのが理解できる気がする。


オルタヒサール

カッパドキア地方のほぼ中央の村。「中央の要塞」という意味で岩の要塞はキリスト教徒の住居跡。
要塞の周りにマッチ箱のような形の住居の集落がある。昔の岩穴は今は果物の貯蔵庫として利用されているそうだ。

高原で放牧される羊

羊たちは冬枯れの草原でなにを食んでいるのだろう
羊飼いの青年はバスが止まると引き返して笑顔で応えてくれた。

ラクダの隊商宿

シルクロードの中継地点として今なお約40の隊商宿が残っているという。
当時はラクダの休憩所・餌場・監視塔・宿泊所等の施設とモスクがあったそうだ。




大自然の力で創造されたカッパドキアはまさに驚きの奇観の地。
そして荒野とも思える大地の岩山や地中深くがキリスト教徒の祈りの場であったとは二重の驚きであった。